僕には今でも忘れられない出来事がある
あれは小学5年生
無邪気に鬼ごっこをしたり
河原でえろ本を集めたり
アリの巣を爆竹で爆破して
アリをジェノサイドしたりしていた頃
無邪気に犬のウンコを踏んで
家に帰ってきた僕の靴を捨てて
次の日の登校のために
星のマークがついた
かっこいい新しい靴を
お母さんがおろしてくれた
翌日の出来事
僕はこれでうんこを踏んだ
靴で登校して
うんこシューズマン
みたいなあだ名をつけられて
ドッジボールで一生
パスを回してもらえない
いじめとかを受けずに済むぞ!
またこの新しい靴で
河原の茂みに突撃できるぞ!
うんこ踏みまくるぞ!
と超上機嫌でスーパーハイテンションでした
当時流行っていた
DIO風に言うと
最高にハイってやつでした
僕の通っていた小学校では
1〜6年生が5、6人で公園とかに集まって
集団で登校する決まりがありました
いつものように
僕が一緒に登校している
グループが集まる公園へ
新しい靴を履いてさっそうと
向かいました
新しい靴を履いた僕は
いいだろう!と
どうしても自慢したくて
人数が揃うまでの間
自分の靴の自慢をしようと思いました
他のみんなは
泥だらけの靴を履いています
小学生なんで当たり前です
僕より年下の子達に
僕「ねえねえ、このくつ新しいんだよ」
僕「星のマークがカッコいいでしょ?」
と先輩の威厳をフル活用して
逃げ場のない自慢話をしていました
確か年下の子供達の反応は
鼻水垂らしながら
「んぁ」
みたいな感じだったと思います
ダメだ
こいつらじゃ話にならない
僕の自尊心は満たされない
そうこうしていたら
同じ学年の女子が集合場所に
やってきました
最後の1人です
女子「おはよう、さあ学校へ行こう」
おいおい
待ちたまえ女子よ
年下の子供では分からない
この僕の靴の
漆黒に白の星のマーク
このかっこよさ
小学校5年生のお姉さんである
キミになら分かるだろう?
と、その女子の履いてる
スニーカーに目をやります
そこにはなんと
星のマークがついているじゃないですか!!
僕がお母さんに昨日おろしてもらった靴と
同じマークのスニーカー
をその女子が履いています
そう
その女子が履いていたのは、あの
コンバースのスニーカーでした
実は僕は、その時
コンバース
なんていう靴があることなんて
全然知りませんでした
ていうか靴は全部同じ会社が
作っていて、世の中には学校の
上履きとそれ以外の靴を作っている2つの
会社しかないと思っていました
テレビは全部ゴランノスポンサーが作っていて
ビルは定礎が作っていて
駐車場はゲッキョクが運営している
そう思っていました
それでもファミコンとスーパーファミコン
の違いは知っていたし
GガンダムとWガンダムの違いも
知っていました
PCエンジンのソフトはメガドライブ
ではプレイできないことも
もちろん知っていました
プレイディアがサターンやプレステ
より売れないことも知っていました
僕はなんでも知っているぞ
そんな小学生ながらの
小さなプライドも持っていました
しかし
靴を作る会社があって
それをメーカーと呼び
さらにそれが何社もある
なんてことは一切知りませんでした
ブランド
なんて言葉も一切知りませんでした
ああ、ジョジョの宿敵ね
ぐらいなもんでした
そんな僕は無邪気に
その僕と同じマークの描かれた
女子の靴を指差して
僕「靴の星のマークがお揃いだね!」
僕「見て見て、僕の靴、昨日お母さんにもらったんだよ!かっこいいでしょ!」
僕「女子も僕と同じ星マークの靴を持ってるなんてすごいね!」(上から目線)
女子「えっ?」
女子「私の靴はコンバースの靴だけど…」
(僕の靴をじっくり見た後)
….
女子「その靴はコンバースの偽物でしょ、ダサっ ウケる(笑)」
え?
偽物??
にせものって何?
え?お母さんが僕にくれた靴が偽物?
ウケる?
ていうかこんばーすってなに?
星マークだから一緒じゃないの?
上履きと外履きしかないんじゃないの?
偽物ってことは
たまごっちじゃなくて
ギャオッpi
ギャオッpiじゃなくて
ねこっちゃ?
じゃあ何かい?
僕は大喜びの超ハイテンションで
ニセモノを身にまとい
さっそうと班のみんなに
自慢した上に
同じ学年の女子に
謎の上から目線で自慢してたの?
ニセモノの靴と知らずに?
そんなバカな!!
この靴がニセモノだと?!?!
その時の僕のリアクションはおそらく
「えっ?? あ、あぁ…」
みたいな感じだったと思います
その日は、その会話の後の
記憶がありません
多分登校してる時はずっと
黙っていたと思います
学校でも靴を履くのが嫌で
休み時間も教室にいました
僕は下校後、泣きながら
本物の星マーク(コンバース)の靴を買ってくれ!
とお母さんに訴えました
貧乏で偽物しか買えなかった
家庭で、同級生から偽物と笑われ
恥をかいたであろう息子に対しての
優しいお母さんの気持ち
そんな気持ちも分からず
子供だった僕は
パチモンの靴を玄関に叩きつけて
「どうして偽物なんかを買ったんだ!」
「お母さんのせいで僕のあだ名はパチモンになるかもしれないんだぞ!」
と大声で怒鳴りました
母「ごめんね、すぐには新しいのは買えないから…」
母「もう少し待っててね」
僕は親不孝選手権で
特別賞レベルのクズです
悲しいです、誰も悪くないのに
今でも心が締め付けられます
その日から
僕はスニーカーの鬼になりました
そう、僕はニセモノの靴を
「ウケる(笑)」
と笑われて
スニーカーに目覚めたのです
今までは学校が終わればすぐに
家に帰ってゲームをしていたところを
高学年の下駄箱の靴を全てチェックし
ナイキ、フィラ、アシックス、ミズノ、コンバース、ダンロップ…
というメーカーがあることを勉強しました
さらにナイキのエアマックスというシリーズが
流行っている、という情報もゲットして
その種類も学びました
エアマックス
エアフォース
エアズームフライト
エアフライトタービュレンス
エアベーキン
エアシェイク…
あの頃のナイキの靴の名前って
なんでこんなにカッコイイんでしょうか
コンビニでは靴が写っている雑誌を
全て立ち読みして
お菓子を我慢して
靴が写っている雑誌を買ったり
今までは毎日ゲームショップの
「ドキドキ冒険島」か「わんぱくこぞう」
かイトーヨカドーの屋上のゲームコーナー
に通っていましたが
靴を勉強するために
ダイエーや靴流通センター
に通うのが日課になりました
〜1ヶ月後〜
ようやく、パチモンの靴を
卒業して新しい靴を
買うチャンスが家族から与えられました
多分父親の給料日だったんだと思います
母「1万円までね」
正直僕はその予算の低さにがっかりしました
この日のためにBOON(ブーン)やGETON(ゲットオン)
といった雑誌で靴を勉強して
エアマックスを買おうと思っていたからです
値段:ASK
と書かれた靴屋さんへ電話して
値段を聞いたりしていたので
大体20,000円ぐらいかかると
ふんでいました
僕「えー1万円じゃ、エアマックス買えないじゃん」
今思えば
うちの貧乏な家の収入から
すると1万円というのは相当
の出費だったと思います
それも、たかだか
小学生の靴ですよ
3人家族ですごく小さなアパート
に住んでいたので、本当に貧乏
だったんだと思います
大人になった今では分かります
多分僕が小さい頃に住んでいた
アパートは家賃3、4万ぐらいだったと思います
そこに家族3人で住んでました
夏場は確実にゴキブリが出たし
隣の家の人の話し声や
鼻をかむ音が普通に聞こえる家でした
僕は声が小さいとよく言われるんですが
そういった過去があるから声が小さいんです
ある日玄関を開けると向かいのアパート
のおじさんが外の水道で全裸で
水浴びしているようなところでした
そんな貧乏だった家庭で
父と母が、学校で靴を馬鹿にされて
悔しくて、泣きながら毎日
靴流通センターに通っている
僕を見て、1万円をあげようと
決断してくれた裏にはきっと
色々な想いがあったんだと思います
まあ、そんなことなんてなにも感じ取れない
小学5年生で無邪気(アホ)だった僕は
とにかくその1万円にがっかりして
この靴が欲しい、あの靴が欲しい
と駄々をこねたのを憶えています
できることなら小さい頃の
僕を殴ってやりたい
あ、でも痛いのは僕なのでやめときます
そんでまあ渋々その一万円の予算で
近所に新しく出来た
ダイエーに行くわけですよ
アトモスとかじゃなくてダイエーですよ
せめて靴流通センターに行けばいいのに
そんで色々見ていたら
一応エアーが入ってる
無名のエアマックスっぽい
みたいのがあったんですね
値段も8000円ぐらいで予算内です
もちろんNIKEの文字も入っているのでニセモノでも
ありません
もうこれでいいや
みたいになって、じゃあレジへ持って
行こうとしたら、母が
「やっぱりエアマックスはやめたほうがいい」
と言い出しました
何言ってんだこいつ
気でも狂ったか
まさか土壇場になって
小学生の僕に1万円をあげるのが
惜しくなったのか?
とか思っていたら
母「最近エアマックス狩りというのが流行っているらしい」
母「朝ニュースでやってたから…せっかく買っても盗られたら嫌な思いするよ」
お母さん
なんて優しいんだお母さん
今思い出しただけで、涙が出てきそうです
朝ニュースでそんな事件を
見ていたけど
ウキウキで1ヶ月間我慢して
待ちに待ったエアマックスを
買おうとしている僕に水をさすことに
なるから言うか言わないか
ずっと悩んだんでしょう
でもやっぱり子供が嫌な思いをしたら可哀想
という結論に至り、それを
最後に言おうと決意をしたお母さん
さすがに親不孝でバカな僕も
その優しさには気づくことができました
確かに僕が住んでいた地域は超治安が
悪いところでした
週末は暴走族とパトカーの騒音がすごいし
路駐のバイクのシートはズタズタに
切り裂かれているし
下駄箱のエアマックスのエアの部分も
カッターで切り裂かれて
いるのを何回も見たことがあります
そんな治安の悪いところにしか
住めずごめんねという母の想いや
エアマックスを買う前に
僕を気づかって言ってくれた
お母さんの気持ち
とてもよく分かりました
ただお母さん
ダイエーの中で言わなくてもいいじゃない
おかげで、今からこの
ダイエーという限られた空間の中で
・1万円以内で
・ナイキではない
・かつヤンキーに盗られない
・カッコイイ靴
を探さないといけなく
なってしまいました
しかし母の優しさに
気づいてしまった以上
このミッションをなんとしてでも
やり遂げなければなりません
そこから何やかんや
3時間ぐらいダイエーで悩んで
優しかったお母さんもいい加減疲れてきて
「まだ?先帰っていい?」
みたいな感じでイライラしてきた頃に
買った靴がこれです
フィラ グラントヒル 9,800円(だったと思う)
この靴は裏にエアーが入ってるので
カッターで切られる心配もありません
我ながら完璧にミッション
を成し遂げたと思いました
・1万円以内で
・ナイキではない
・かつヤンキーに盗られない
・カッコイイ靴(多分)
そして何と言っても
母の想いをクリアしています
間違いなくヤンキーはフィラに
興味がないはずです
フィラ狩りなんて聞いたこともありません
近所でフィラの靴を履いている人も見たこと
ありません
靴を盗むようなヤンキーは
グラントヒルというバスケの選手なんて知っている
はずがないので盗まれる心配もありません
完璧だ
やり遂げたよ!お母さん!!
まぁ僕は
エアマックスが欲しかったんですけどね
そして次の日ウッキウキで
コンバース女子にフィラの靴を自慢したら
女子「フィラ?何それダサっ ウケる(笑)」
と言われてまた泣きながら
下校したお話はまた次回
そんな幼少期の衝撃的な出来事を経験し
それがトラウマとなって
色々なメーカーのスニーカーを渡り歩いてきた僕も
30代になりました
スニーカーは小さい頃の憧れもあり
ナイキを履くのが多かったかなと思いますが
最近はアシックスのオニツカタイガー
で落ち着いています
歩いてて疲れないし、壊れにくいのでコスパ最高です
アイキャッチのスニーカーは多分2年以上
履いてると思います
白買っとけばどんなファッションにも合いますしね
普通っぽいけど機能は普通じゃない
知る人ぞ知るアイテム、さりげない主張
そんな感じが気に入っています
ちなみにコンバースのパチモンの
スニーカーは父がかっこいいじゃんと
喜んで履いていました
めでたしめでたし